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2025年の作品は、通常の多色刷りに、エアブラシによるぼかし塗装をトッピングしました。なんだ、版画じゃないじゃないか、と思うかもしれませんが、ステンシル技法という立派な版画テクニックのひとつです。
途中までは通常の版画制作過程と同じですが、おさらいを兼ねて紹介していきます。
下絵を描画し、着色イメージを構想します。
今回は、はがき原寸大の版木ではなく、約2倍の大きさの版木を使うので、下絵も大きく描きます。
着色イメージに使用しているのは「KARISMACOLOR」というお気に入りの色鉛筆です。芯が柔らかく、紙の上の混色ができるので、独特の柔らかい風合いが出ます。作品によっては、骨版を刷った後にこの色鉛筆で調色して仕上げる場合もあります。
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版木と用紙についてうんちくを述べておきます。
今回の作例では倍判サイズの版木を使用しています。倍判とははがきサイズの倍の大きさという意味です。はがきはISO規格でいうところのA6サイズに近似しているので倍判はA5サイズかと思いきや、版木の場合には作品の周囲の縁を確保するため、ひと回り大きく作られています。結局のところ、A5とB5の中間あたりの大きさです。
はがき原寸大の版木を利用するときは、彫刻が細かくなるので、朴などの無垢材にしますが、今回は大きめなので、彫りやすさと値段を考慮してシナベニヤ材を使います。
また、用紙は機械漉きの和紙を利用しています。手漉きの高級和紙も売られていますが、機械漉きの方が漉きムラが少なく安価なので版画用紙にはこちらで十分です。
版木への転写や彫刻に関しては今回本題ではないのですっ飛ばし(年賀版画の制作過程をご覧ください)、刷りの工程に移ります。
大まかな手順は色版(複数回)→エアブラシ→骨版の順です。
写真は1回目の色版(グレー)の上から、2回目の色版(茶色)を重ねているところです。
次にステンシルを用意します。と言っても大げさなものではなく、いわばマスキング材です。昇ったばかりの太陽とその水面を白抜きするためです。太陽は輪郭がはっきりしすぎないよう、紙から数ミリ浮かせるように固定します。また水面は揺らぎを表現したいので、和紙を手で千切って作り、逆に水平線はきっちりと直線を出します。
ステンシルをセットしたら、その上からエアブラシで明るい黄色を吹きます。吹付後にステンシルを外せば、白抜き部分が出来上がります。
エアブラシは模型用の低圧タイプのものです。写真のコンプレッサーはアネスト岩田製の中圧型ですが、こんなに大きなものである必要はありません。
問題は塗料です。和紙に吹く、という経験がなかったので、いくつかの塗料で試してみました。普段よく使うラッカー系の塗料を吹いてみたところ、発色が鮮やかすぎて、版画には不釣り合いでした。いっぽう、版画用絵の具や水彩画用絵の具を薄めて吹いたところ、適正濃度にすると発色が薄すぎるうえ、紙がビショビショになってしまいました。良さそうだったのは水性アクリル絵の具で、チューブから絞った絵の具を牛乳程度の濃度に薄め吹いてみたところ、版画絵の具との違和感がなく綺麗に吹けました。
明るい黄色が乾いたら、今度は赤みを加えた橙色で影を作ります。実際には何枚も試行錯誤しながら作っています。
最後に骨版を刷り上げたら完成です。
これで完成です。
ぼかし塗装には、版木に刷毛やブラシで直接絵の具を刷りつけてフリーハンドで刷る方法や、金網越しに絵の具を散らす方法など、いくつかやり方はありますが、エアブラシという道具を使った方法も面白いと思います。
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